出版社のつくり方(クラーケンの場合)【Amazon e託編】/クラーケン編集長日誌

新規出版社のAmazon販売はe託(大村紙業 or 京葉流通倉庫契約)がベスト




前回は書店営業について紹介しましたが、今回はAmazonの扱いについてです。

販売数の15〜30%程度を占めることになるので、納品ルート、つまり取次経由か直取引(e託)かを慎重に考える必要があります(リアル書店は、前々回に書いたようにトランスビューに直取引代行を依頼するのをおすすめします)。

結論から言うと、新規に出版社を立ち上げるなら、カート落ち(在庫切れ)を極力防ぐだけでなく、資金繰りの面でもAmazonはe託(直取引)での販売がベストです(Amazonは翌々月末払いと、出版業界としては早いのです)。

「ダメージ品が1冊でも着払い(800円くらい)で返ってくるのが地味につらい」
「契約をいつ変えてくるかわからない」

など、e託契約出版社からは否定的な声も聞かれます。ただ、無料のツールでほぼリアルタイムで売上を把握できますし(取次経由の場合はベンダーセントラルに登録し、売上の1%か2%を支払わないと同じツールが使えません)、大村紙業か京葉流通倉庫と契約すれば発注への返答・発送も自動で行えます。

クラーケンは大村紙業と契約しました。大村紙業との倉庫契約は基本料金が月額2万5000円。タイトルが少ないうちはそこそこ大きいコストではあるものの、発送を自社で行う手間賃と考えると割安な印象です。

倉庫契約をしないとどのような手間が発生するのか

実際、Amazon e託で自社発送している会社は多いですが、これはなかなか修羅の道です。週5回のAmazonの注文(PO)に24時間以内に回答し、指定の方法で発送しなければなりません(発送タイミングは自由に設定可能。ただ、在庫ありを保つなら即納品が基本)。

実は今回、倉庫のEDI連携が間に合わず(要2週間)、初回の注文のみ印刷所から直送することに。602冊をダンボール12箱で納品したのですが……。

側面にバーコードの入った紙を糊付けしたり(正確には印刷所に依頼しましたが、担当者がAmazon納品をしたことがなく、その指示・解説がまた大変でした)、伝票番号ごとに事前出荷通知を入力したり(佐川だとダンボールごとに伝票番号が分かれない配送方法もあるらしく、それにすれば楽だったかも)、2時間くらいは消費した気がします。

その上、マニュアルに特に書かれていないので納品書を入れ忘れてしまい、在庫が正しく反映されるか冷や冷やでした。結果としてスムーズに反映されましたが、心臓に悪いので自社でがんばらないほうが良いでしょう。

大村紙業の場合は1冊15円でAmazonにパレット納品できるので(※10冊だと宅急便500円に比べて350円のコストダウン)、コスト的にも注文が増えるほど有利になるはずです。これも、倉庫契約の大きなメリットではないでしょうか。

……次回に続く。


執筆者

鈴木収春(すずき・かずはる)
クラウドブックス株式会社代表取締役/クラーケン編集長

1979年生まれ。講談社客員編集者を経て、出版エージェンシー・クラウドブックスを設立。ドミニック・ローホー『シンプルリスト』、須藤元気『今日が残りの人生最初の日』、関智一『声優に死す』などを担当。東京作家大学などで講師としても活動中。